
【Live In New York】Corine Bailey Rae (2007) 時代もジャンルも人種も越えた、至高の歌声
いつの時代も、正しく評価されてしかるべき歌姫
皆さん、いかがお過ごしですか? 輪太郎です。
21世紀の音楽も紹介しないとフェアではないな~、と思っておりまして。
で、iTunes先生に確認したところ、私はこのアルバムをヘヴィーローテしている事が判明。
ライブ盤が続いてしまいますが、CD世代以降のアーティストは、勿論A面B面が無いため、どうしても丸ごと一つで世界感を持つ作品が希少になってしまい、まとまりを考えるとどうしてもライブ盤に目が行ってしまうのです。
で、今回ご紹介のコリーヌ・ベイリー・レイさん。
とろける美声を持つ歌姫としてだけでなく、優れた作品を生むアーティストでもあり、売れ線ばかりの音楽マーケットの中でも稀有な存在だと思います。
私はあまり音楽のジャンル分けが好きではありませんが、、、でも便宜上、便利なので、どうしても分けたくなる時がありますが、彼女については特にジャンルに括る必要はない、と思っております。
ただ「良質の音楽」。「優れた歌手」。それでOKです。
下手にジャンルにとらわれて偏見を持ってほしくないです。恐らくですが、ハードロック好きでも、ジャズ好きでも、誰が聴いても心地よい音楽だと思うからです。
特に「R&B」みたいな括りで済ますには、あまりにもったいない。
そもそも、近年はR&Bと言えばお洒落、といったファッション感覚で使われることが多く、本来の意味とはかけ離れた使われ方をされている気がしてなりません。
黒人系なら皆、R&Bだというわけではありません。
リズムはともかく、「ブルース」という言葉を軽々しく使うのは、どんなものでしょう。
スモーキー・ロビンソンやマーヴィン・ゲイのような音楽は、現代ではほとんど聴かれなくなって久しく、そもそもその系譜はどこに引き継がれているのやら。。
おっと、脱線。
とにかく、どんなジャンルのリスナーにも響く説得力がある、誰にでも自信を持ってオススメ出来るアーティストだと思っております。
そして、このような作品群が評価されていることを考えると、今の音楽シーンもまんざら捨てたものではないな、と思ったりするのです。
アルバムとしての「Live In New York」
このアルバムはかなり特殊な特徴を持っております。
彼女のデビュー作は2006年、自身の名を冠した「Corine Bailey Rae」というアルバムです。
で、このライヴ盤が2007年のリリース。
そう、デビューして2枚目のリリースがライブ盤であり、しかも12曲中、11曲がデビューアルバムから、1曲がカヴァー曲。
デビューアルバムの全曲を披露しているのです。
それだけ聞くと、どんな戦略なんやねん、と思いますが、なかなかどうして、私はスタジオ盤よりもこのライブ盤の方がはるかに素晴らしいと思っています。
デビュー盤は、グラミー賞で最優秀新人、最優秀楽曲、レコードの主要3部門にノミネートされるという偉業を成し遂げています。
つまり、このライブアルバムを聴けば、その名盤に収録されている全曲を聴くことが出来ますし、またプラス1曲のカヴァー曲が秀逸なんです。
結局、彼女がグラミーを受賞するのは2012年、ボブ・マーリーの「Is This Love」です。つまり、カヴァー曲です。
そう、彼女のカヴァー作品はどれも秀逸で、当ブログに「アルバムで聴く音楽」というコンセプトが無ければ、カヴァー作品のみのミニアルバム「The Love E.P.」を紹介したかったほどです。
Love E.P.のタイトルから分かるように、L.P.とは対極なものですから、残念ながらここではご紹介できません(笑)。
「アルバムを丸ごと」聴くための重要な要素として、「曲順」はとても重要です。
まだデビューアルバムを聴き込む前にこのライブアルバムを聴いた私としては、そのあたりを冷静に評価するフラットな姿勢が持てたのですが、どう考えてもライブの方が良い!
そして秀逸なカヴァー。
名盤とならないワケがありません。
また「特殊な特徴」として、同時リリースされた映像作品(DVD)が挙げられます。
選曲も曲順も同じなのですが、CDがニューヨーク・ライブであるのに対し、映像盤はロンドンでのライブなんです。
とても変わった戦略ですが、CDで感動した者としては、違うバージョンの歌声も聴きたくなるという、まさにマーケティングの勝利。まんまと乗ってしまいました。
しかしこの作戦、、、デビューアルバム発売後に、全く同じセットリストでのライブを発売するというこの作戦、レコード会社によほど自信が無ければ出来ませんね。
残念ながら入手しにくい状況になっておりますが、機会があったら是非、観て下さい。
Prime VideoチャンネルのQello Concerts by Stingrayでも視聴可です。
それでは、実聴!
1. Call Me when you get this
Music by Corinne Bailey Rae / Steve Bus
デビュー・アルバムでは6曲目に入っております。
11曲入りのうちの6曲目ですし、曲の流れ的に考えると、A面B面で分けるとしたら、B面1曲目、といったところでしょうか。
デビューアルバムの1曲目はグラミーノミネートのヒット曲なので、ライブを盛り上げるためには後半に持っていく、という方が当然良いでしょうから、ライブ盤の曲順はそういうあたりも考慮されていると思います。
それを考えると、この曲が冒頭を飾るのは、とても良い、納得の選曲だと思います。
2. Trouble Sleeping
Music by Corinne Bailey Rae / John Robert Beck / Steven Chrisanthou
シングルカットされたヒット曲。
と言っても、デビューアルバムからは4曲がシングルカット、カップリングも含めるとほぼアルバムの8割を聴けてしまう、という(笑)。
そういった事情もあり、当ブログではライブ盤の方を取り上げた、という事情も。
スタジオ盤のエンディングはフェードアウトです。
どのアーティストもそうですが、フェードアウトの曲をライブで演奏する場合、エンディングをどう処理するかが腕の見せ所。
その点、この曲は非常に良く出来ており、スタジオ盤よりも印象的でGood。
エンディングにつなげるアドリブ部分も、新人とは思えぬ力量。ライブで慣らしてきた本格派、というのを感じさせます。
3. Breathless
Music by Corinne Bailey Rae / Marc Nelkin
最も彼女らしさを感じる佳曲。
A面B面を想定すると(笑)、A面の3曲目になるわけですが、役割としては完璧。
ちなみにスタジオ盤では8曲目なので、A面B面でいうとB面3曲目のポジション。
(かなりややこしい話をしてますね、、、スミマセン)
4. Enchantment
Music by Corinne Bailey Rae / Rod Bowkett
デビューアルバムでは2曲目に配置されている作品。
独特な味があります。
共作の Rod Bowkett さんは、全盛期のクインシー・ジョーンズやダイアナ・ロスに楽曲提供している方のようですね。
5. Till It Happens To You
Music by Corinne Bailey Rae / Pamela Sheyne / Paul Herman
先ほど、R&Bの話をしましたが、この曲と次の曲については、そう呼んで申し分ない曲だと思います。
デビューまでに下地をしっかり築いていたのがよく分かる佳曲です。
6. Since I’ve Been Loving You
言わずと知れた、レッド・ツェッペリンの名曲です。
コリーヌはツェッペリン・ファンであることを公言しています。
このアルバム唯一のカヴァー曲です。
間違いなく、本家よりもブルースしております。
ロバート・プラントの感想を是非、聴いてみたいです。
ビートルズやズェッペリンのクラスとなると、単なる「好きだからカヴァー」となる場合が多く、もちろん本家を凌ぐ出来を期待するのは非常に酷です。
が、彼女はポール・マッカートニー&ウィングスの「マイ・ラヴ」や「ブルーバード」、ジョン・レノンの「アイム・ルージング・ユー」などをカヴァーしており、そのどれもが秀逸で、是非聴いて頂きたいです。
7. Like A Star
music by Corinne Bailey Rae
実は、私が初めて彼女の映像を見たのがBBCのジュールズ倶楽部で、この曲を弾き語っておりました。
本ライブもそうですが、ギターのみのシンプルなアレンジで、彼女の良さが凝縮されていて、シングル盤よりずっと良いですね。
クレジットを見ると、この曲だけは他の作家陣のサポートを受けておりません。
彼女の地力を見た気がします。
8. Put Your Records On
music by Corinne Bailey Rae / Steven Chrisanthou / John Robert Beck
コリーヌと言ったら、この曲でしょう、多くの人にとっては。
グラミーにノミネートされた名曲です。
曲構成もアレンジも、目新しく斬新なものは何もない、とてもシンプルな曲なんですが、この曲にしかない不思議な魅力があります。
また、歌詞もそうなんですが、曲自体に心地よいポジティブ・オーラがあり、とてもハッピーな気分になれます。
9. Butterfly
music by Corinne Bailey Rae / Bowkett Roderick John
私はデビューアルバムの中で、この曲が一番のお気に入りです。
不思議な浮遊感があって、ブルースを感じます。
このライブヴァージョンは、バックコーラス陣も良い味を出しております。
10. I’d Like To
music by Corinne Bailey Rae / Paul Philip Herman / Thomas Asher Danvers
最後の曲です、と紹介されています。
このグルーヴ感ですが、彼女にカリブの血が流れているのも関係しているような気がします。
単なる黒人系R&Bシンガーとはちょっと違う匂いがします。
11. Choux Pastry Heart
music by Corinne Bailey Rae / Teitur Lassen
2006年公開のイギリス映画「ヴィーナス」の挿入歌として、コリーヌの曲がこのアルバムから5曲、選ばれています。
この曲はそのうちの1曲。
そう考えると、破格の新人という感がありますが、何故かマライア・キャリーやホイットニー・ヒューストンのような、煌びやかな印象がないのが、何とも良いです。
恐らく本人が、アーティストとしてあるべき自分の姿を良く理解していて、地に足が付いているからではないでしょうか。
12. Seasons Change
music by Corinne Bailey Rae / Steven Brown
デビューアルバム(スタジオ盤)でも、この曲がエンディングとなっています。
トータルで考えると、この曲は最後以外にないと思います。
印象的なボーカル・リフの光る曲です。
聴き終えて、、、、
彼女のお父さんはカリブ系、お母さんはイギリス人ですので、ハーフなんですね。
どこか従来の黒人歌手とは違う匂いがしますが、そういった血統的なものが関係しているのでしょうか。
とにかく、近年稀にみる、正統派のシンガー・ソングライターだと思います。
作られた感が無いんですよね。
あくまでも、素、という印象です。
ただ残念ながら、地道さゆえ、多作なタイプではないので、デビュー以来、作品を発表するペースが極端に遅い。
ライブ盤やカヴァー集を除くと、オリジナルアルバムは、
2006年 コリーヌ・ベイリー・レイ
2010年 あの日の海
2016年 ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ
と、10年で3枚のペース。4年、6年、と間を置いて、今は直近からもう5年経っています。
超マイペースですね。。契約はどうなっているのか不思議なくらい。
もっとも、儲けに群がり、売れ線の作家を付けて祭り上げる産業音楽に塗れない、純度の高い音楽を保持してくれるなら、これくらいの期間は待たなければ駄目、という事でしょうかね。
いろいろな意味で、奇跡的なアーティストだと思います。
それでは、また別の記事でお会いしましょう!

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