~アルバム単位で聴く音楽~【The Ultimate Collection DISK1】The Brian Setzer Orchestra 採算度外視、やりたい事をやったらこうなった

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【The Ultimate Collection】The Brian Setzer Orchestra 採算度外視、やりたい事をやったらこうなった

これが売れるなんて、世の中捨てたものじゃない

皆さん、いかがお過ごしですか? 輪太郎です。

今回はイレギュラーな記事となります。
「アルバム単位で聴く音楽」であるのは間違いないのですが、「ライブ盤」を2回に分けてご紹介します。

ブライアン・セッツァー・オーケストラです。

私はストレイ・キャッツ時代から彼の大ファンで、デビューイヤーライブからほぼ来日公演は必ず見に行っております。

パンクブームと同時に衝撃的なデビューを果たしましたが、飽きられるのも早かった。
不遇な時代、私は毎回届く優先予約のチケットで最前列、悪くても3列目でライブを見ていましたが、会場はリーゼントの’50sボーイばかり。新曲はシラけ、昔のヒット曲のみ盛り上がるという、ほぼベンチャーズ状態で、とても辛かった時代を経験しています。

が!
オーケストラでブレイクし、グラミー受賞とともに大復活。
オーケストラ初来日の際は、「よく続けてくれた」と、ライブを見ながらマジで涙を流しました。それほど彼の復活が嬉しかったのですが、その後、チケットが取れなくなったのは大誤算、、、。

継続は力なり、を地で行くアーティストです。

昔、私が経営していた店でBSOのライブを流していたところ、若いお客様が「これ、有線じゃないですよね?申し訳ないんですが、アーティスト名とアルバム名を教えてくれませんか?」と声をかけてきました。

ブームとか関係なく「良いものは良い」という、時代を超えた普遍性が彼の音楽にはあります。

結局、スウィングもロカビリーもカントリーもロックンロールも、基本はいわゆる3コード、音階で言ったら1度4度5度の音楽で、元は同じなのです。
それが、人間が聴いて最も心地よいパターンなのです

アルバムとしての「 The Ultimate Collection DISK1」

さて、今回はDISK1,1995年モントリオール国際ジャズフェスティバルのライブを収録したものです。

このライブの頃は、まだ洗礼されていないというか、アイディアをやっと具現化した状態と言ってもよく、ゆえにオリジナリティ以前、ジャズ要素がまだ強いです。
その後、スタジオ盤3枚目(Dirty Boohie)のヒットにより、スウィングが大ブームとなります。

スコアはなんと、ブライアン本人が書いています。
ブラスを演ったことがある方は分かると思いますが、管楽器は通常、B♭がルートとなるので、ギターとの譜合わせは案外面倒です。
デビュー前、ブライアンはジャズも学んでいたそうなので、ただのヤンキーではないんです。

ビックバンドをバックにギターを弾きたい、という夢を実現すべく、彼は17人のメンバーを引き連れてツアーに出ます。
最初のアルバム2枚までは全く売れなかったので、大赤字だったそうです。

売れてからも、やはり経費は膨大で、採算を考えたら出来ない、とインタビューで申してました。
何とロマンある話じゃあーりませんか!

それでも彼の音楽は、決して懐古主義ではなく、技術的にもアレンジ的にも、とても斬新なところが多く、進化しているスウィングと言えます。
BSOとしては3曲、グラミーを受賞しています。

それでは、実聴!

【DISK1】

このライブは1995年収録ですが、2枚目の 「ギター・スリンガー」 は1996年リリースです。
ライブでは 「ギター・スリンガー」 からの曲が多く演奏されていますが、つまり、ライブ時点では全く売れなかったファースト・アルバムしか世に出ていなかったわけで、ジャズ・フェスティバルに来ていた人たちはどのようにこのビッグバンドを観ていたのか、非常に興味があります。

もっとも、これだけ完成度の高いビッグバンドなんて無かったはずなので、新鮮な驚きだったはずです。十分楽しんでいたのではないでしょうか。うらやましい。。。

1. Intro

BSOの紹介です。

2. James Bond Theme

ご存じ、007・ジェームス・ボンドのテーマです。
何が始まる?という期待感。渋いです。

3. Hoodoo Voodoo Doll

スタジオ盤2枚目、「ギター・スリンガー」に収録されています。
彼のアレンジはエンディングが秀逸なものが多く、プレイヤーとしてだけでなく、アレンジャーとしての腕が光ります。

4. Good Rockkin’ Daddy

エタ・ジェームスのカヴァー。
ブライアンのカヴァーは比較的オリジナルに忠実ですが、楽曲を自分のものにするプロデュース能力が高いため、セットリストにカヴァーとオリジナルが混在していても違和感が全くありません。

5. Your True Love

カール・パーキンスのカヴァー。
ブライアンはこの曲がお気に入りで、ストレイキャッツ時代もこの曲をライブで披露しています。

ジャズとシャンソンの相性が良いように、ロカビリーとスウィングの相性はバッチリですね。前述のようにコード構成が全く同じなのが理由ですが、それゆえ、曲の個性を出すのが難しい。アレンジの腕の見せ所です。

6. My Baby Only Cares For Me

新曲だよ、と紹介されている、セカンドアルバム「 ギター・スリンガー 」に収録されている曲。
ブライアンはライブやアルバムの構成で、必要な空間に必要な楽曲を埋めるのに長けていて、足りなければ自分で作ってしまう、芸達者なところがあります。

身も心も’50年代な人間なんですね。

7. Brand New Cadillac

ヴィンス・テイラーのカヴァー。
ザ・クラッシュのカヴァーが有名ですが、ブライアンはザ・クラッシュのジョー・ストラマーととても仲が良かったです。
ギター・スリンガー」 制作時には数曲、共同でソングライティングの作業を行っています。

デビューイヤーも近く、両バンドともパンクムーヴメントから生まれています。
1983年にはストレイキャッツもザ・クラッシュも、当時の野外最大イベント、USフエスティバルに出演しています。

また、両バンドともザ・クリケッツの「I Fought the Law」をライブの定番曲にしています。
パンクであろうが、ロカビリーであろうが、根っこは同じですね。

もっとも当時はパンク絡みにしてしまえば売りやすいこともあり、ストレイキャッツは「パンカビリー」なんて言われていました。何だそりゃ。
もっとヒドい例ですが、あの「ポリス」がパンクに分類されていましたからね。。凄い時代だ。

ともかく、BSOのヴァージョンはとてもゴージャスなアレンジで、このアルバムのベストトラックの1曲と言えます。

8. Sittin’ on It All the Time

ワイノニ・ハリスのカヴァー。
「A列車で行こう」のフレーズを入れるなどのお遊びも。
間奏部までは、’50年代でも有りそうな音なのですが、あり得ないのはギター・ソロ。

映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」で主人公のマーティーが、チャックベリーの「ジョニー・B・グッド」を弾いているうち、興奮して現代的な速弾きソロになってしまい、浮いてしまう、、、というシーンがありました。

この曲におけるブライアンのソロはそのレベルなのですが、音遣いが非常に繊細で高度なので、そういった違和感を感じさせません。
古臭さを感じさせないだけでなく、現代のエッセンスを融合させているあたり、ライブを短調にさせない要因となっています。

9. Ghost Radio

このライブは2枚目「ギター・スリンガー」の制作中に行われたため、その収録曲が多いですね。
印象的なホーンの迫力ある演奏です。

10. (Everytime I Hear)That Mellow Saxophone

ロイ・モントレルのカヴァー。
ストレイ・キャッツでは「ワイルド・サキソフォン」という曲名で、デビュー・アルバムの最後に収録されています。

余程好きなんだと思いますが、楽曲としてはBSOの方が相性が良さそうですね。
が、どちらもカッコイイ演奏です。

11. Rumble In Brighton

ストレイ・キャッツのヒットシングルをセルフ・カヴァー。
オリジナル・ヴァージョンはデイヴ・エドモンドのプロデュースで、スピード感溢れるスリリングな曲でしたが、こちらはビッグ・バンドに完全にマッチした、ゴージャスなヴァージョン。

もしかしたら、曲を作った当初は、こちらのヴァージョンに近いイメージで作っていたのではないか、と、私は想像しています。
何故なら、デビュー直後こそスピードバージョンでしたが、ストレイキャッツ後期はこちらのヴァージョンに近い、一貫してゆっくりテンポで演奏されていたからです。
「Runnaway Boys」なんかも同じで、発売時よりもスローテンポで演奏されます。

オリジナルよりテンポを速くし、キャッチーに模様替えして売り出す、という成功例で有名なのは、ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」などがありますね。

12. Route 66

言わずと知れたジャズのスタンダード・ナンバー化した有名曲。
オリジナルはボビー・トゥループ、1946年の作品。

メンバー紹介で短いソロ・パートを用意しており、BSOがバンドである事をアピール。
ストレイキャッツとは随分違う(笑)、仲間意識の強さが伺えます。

BSOでは、1枚目のデビューアルバムに収録されています。

13. Rock This Town

恐らく、ブライアン・セッツァー本人の一番のお気に入りソング。
必ず、ハイライトに持ってきます。

1983年のUSフェスティバルでのパフォーマンスは、たった3人のシンプルな楽器編成で、数十万人を前にした圧巻の演奏でした。

やはり基礎的な設計がしっかりされているので、何年経ってリフォームしても耐えられる強さを持っています。アメリカンスタンダードと言ってもおかしくないレベルに達しているかも知れません。

ブライアンのファンの間では、どのライブパフォーマンスが良かった、という話題で一晩酒の肴に出来るくらい、どのライブでも必ず演奏されています。

14. As Long As I’m Singin’

ボビー・ダーリンの曲。
ライブの後半に持ってくる事が多いので、この曲が始まると「もう終わりかいな」という不思議な感覚になります。

ブライアンのギターテクニックは業界では非常に有名ですが、この曲のように、裏方に回ってのバッキングも激シブなんです。完全にジャズ・プレイヤー。

15. Honkey Tonk

2枚目「ギター・スリンガー」 の最後に収録されているインストルメンタル。

冒頭で「ビッグバンドでギターを弾いてみたかった」と彼が言っていた話をしましたが、まさにこのようなホーンの枠組みのなかでアドリヴ(この場合はインプロヴィゼーションと言うべきか)をしたい、という願望だったと思います。

まるでセッション曲のような印象ですが、どっこい、細部まで計算されている、かなり高級なアレンジが施された曲です。聴きどころ満載です。

16. Stray Cat Strut

こちらも定番、ストレイキャッツのセルフカヴァーです。
この曲も、原曲自体が非常に良く練られていて、10代の頃に作られたとはとても思えない曲です。

まるで10代の頃に、このようなビッグバンドを背に歌うことを想定して作曲したかのように思えてしまいます。

聴き終えて、、、、

BSOの1枚目は全く売れず、レコード会社の契約も切られてしまうほどでしたが、こうして聴くと、セールスを度外視しても自分の夢を貫いたブライアン・セッツァーというアーティストに、両手がミッキー・マウスの手袋のように大きく腫れてしまうほどの拍手で称えたくなります。

そして、ようやく3枚目のアルバム「ダーティ・ブギ」でブレイクすることになります。
その次の4枚目の「ヴァヴァーム」と、2枚連続でグラミーを受賞します。

そのヒットアルバムを引っ提げ、来日公演が行われました。
その模様を収録したのが、DISK2です。
私もそのライブを観にいっておりますので、私の声も収録されているわけです(笑)。

私はこの1枚目も大好きですが、一般的には2枚目の方が評価は高いと言えます。
というのも、ヒット曲のオンパレードですし、何と言ってもグラミー受賞曲が3曲も入っています。
良くないワケがない。

楽しみですね~。

それでは、次の記事でお会いしましょう!

※続きの記事

 【The Ultimate Collection DISK2】The Brian Setzer Orchestra 完全復活、グラミー受賞3曲を含む名演奏

Wikipedia The Ultimate Collection

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