
- 【The Ultimate Collection DISK2】The Brian Setzer Orchestra 完全復活、グラミー受賞3曲を含む名演奏
- 成功とは、失敗しても失敗しても、やる気を失わない能力である。
- アルバムとしての「 The Ultimate Collection DISK2」
- 【DISK2】
- 1. Hawaii Five-O
- 2. This Cat’s On A Hot Tin Roof
- 3. The Dirty Boogie
- 4. Jumpin’ East Of Java
- 5. The Footloose Doll
- 6. Gloria
- 7. Drive Like Lightning(Crash Like Thunder)
- 8. Caravan
- 9. Americano
- 10. I Won’t Stand In Your Way
- 11. Mystery Train
- 12. Gene & Eddie
- 13. Rumble In Brighton
- 14. Sleepwalk
- 15. Stray Cat Strut
- 16. Jump Jive An’ Wail
- 17. Pennsylvania 6-5000
- 18. Gettin’ In The Mood
- 19. Get Me To The Church On Time
- 20. Rock This Town
- 聴き終えて、、、、
【The Ultimate Collection DISK2】The Brian Setzer Orchestra 完全復活、グラミー受賞3曲を含む名演奏
成功とは、失敗しても失敗しても、やる気を失わない能力である。
皆さん、いかがお過ごしですか? 輪太郎です。
「成功とは、失敗しても失敗しても、やる気を失わない能力である。」
これは、他のヨーロッパ諸国と違い、最初から一切の妥協無く、ヒトラーの第三帝国に徹底的に抗して勝利した、イギリスの名首相チャーチルの名言です。
ブライアン・セッツァーは2度、挫折を経験しています。
若干20歳そこそこで世界的な成功を手に入れた後、驕りや数々のスキャンダル、メンバーとの不仲で、わずか2年でバンドは実質的な解散状態。
経済的なこともあり、バンド復活。しかし復活後リリースされた2枚のアルバムは全く鳴かず飛ばず、久々にデイヴ・エドモンドと組んだ復活3作目も、プロモーションにお金をかけたわりに成功とは言えず、細々とライブで食いつなぐ時代が続きました。
長らく温めていた「ビッグバンドとギター」という構想から、満を持してBSOのデビューアルバムを発表するも、これも全く売れず、レコード会社から契約を打ち切られてしまいます。
それでもあきらめず、2枚目を発表しますが、これもイマイチ売れず。
でも諦めない。
何故? 多分、好きだからでしょう。
自分の音楽を信じているからでしょう。
そして3枚目 「ダーティ・ブギ」 で奇跡の大復活、スウィングは一大ブームとなり、同アルバムからはグラミー受賞曲を2曲も出しています。
デビュー来日からずっと浮気せず、ライブ皆勤賞を続けている私としては、音楽だけでなく、彼から学ぶことは非常に多いのです。
来日時、未成年のファンに手を出して御用となったり、ロバート・プラントの娘に手を出そうとしてロバートの逆鱗に触れたり、若い頃はとんでもない不良だったことは確かですが、それも含めて、成功、挫折、仕事への信念など、成長する兄貴(私はそう呼んでいます)をずっと見てきました。
その活動の頂点を極めた記録、と言えるのが、本作品です。
アルバムとしての「 The Ultimate Collection DISK2」
さて、今回はDISK2。
2001年2月22日、赤坂ブリッツでのライブを収録したものです。
当日、そこにいた私としては、特別な思い入れがある作品です。
ファンであることを差し引いても、素晴らしいライブ盤であることは間違いありません。
彼のどんなアルバムを見ても、選曲、演奏、全てにおいてコレを上回るものはありません。
1枚だけオススメするとしたら、迷わず、このDISK2です。
このDISK2は、もともと日本のみでリリースされたライブ盤「JUMPIN’ EAST OF JAVA」に、中間部の3ピース・パート4曲を追加収録したものです。
このライブの模様はDVD「Live In Japan」として観ることが出来ます。
現在、入手困難ではありますが、映像付の方が格段に楽しめますので、機会があればぜひ、見て下さい。
それでは、実聴!
【DISK2】

1. Hawaii Five-O
言わずと知れたアメリカの大人気ドラマのテーマ曲。
ベンチャーズの演奏は有名です。
ブライアン・セッツァーはベンチャーズ絡みのカヴァーが多く、リスペクトしているのが伺い知れます。
日本でエレキブームを巻き起こした人たちですし、エレキという楽器を普及させた意味では、こと日本に限ってはビートルズよりもはるかに影響力がありました。
しかし’60年代当時の日本では、ベンチャーズとビートルズは全く同類とされていたのですから、笑うに笑えない話です。
(どちらが優れている、という意味ではなく、方向性の話です、念のため。)
ちなみにベンチャーズはモズライト社製のギターを使っており、ピックアップはデアルモンド社製です。
ブライアンはグレッチ社の6120、ピックアップはフィルタートロンです。
グレッチ6120にはデアルモンド社製のPUを搭載したモデルもあり(エディ・コクランが使用)、音的にはかなり互換性のあるものです。
2. This Cat’s On A Hot Tin Roof
ブライアン復活ののろしとなる3枚目「ダーティ・ブギ」のオープニングを飾る、渾身の自信作。
ライブでもオープニングが定位置になっています。
この曲は3ピースでやっても超カッコ良くキマります。
ピアノを入れて4ピースの演奏ですが、ブライアン本人の2007年の公式作品「レッドホット&ライブ!」で聴くことが出来ます。
3. The Dirty Boogie
続いて「ダーティ・ブギ」からタイトル曲。
ストレイキャッツでデビューした時は「ネオ・ロカビリー」と呼ばれていましたが、BSOでは「ネオ・スウィング」と呼ばれています(笑)。
正に、ネオ・スウィングを地で行ったような作品。
DISK2の魅力は、多くがオリジナル作品で固められている、という点が挙げられます。
これらの楽曲群を「ネオ」と片付けてしまうのがためらわれるのは、私だけでしょうか。
完全に、現代の音楽だと思うのですが。
4. Jumpin’ East Of Java
私のお気に入りです。
もともとこのDISK2は、2001年に日本のみで「Jumpin’ East Of Java」という、この曲のタイトルを冠したライブアルバムとして発売されたものに数曲を加えたものです。今では中古盤でしか手に入りません。
本作の方がお得に思えるのですが、例えば17曲目の「ペンシルバニア6-5000」で間奏がカットされていたり、編集のあとが見られるので、私は元のアルバムの方が好きなんです。
ブライアンのギターはトーン回路を切っていて、コントロールはボリュームとピックアップセレクターのみのシンプルなものですが、彼はこのPUセレクターで、演奏中フロントとリアを上手く切り替え、トーン変化を多用します。
この曲のギターソロでもその手法で、まるで2人のギタリストが掛け合うような演出をしています。
芸が細かくてニクいです。
5. The Footloose Doll
「ダーティ・ブギ」 の10曲目に収められている曲。
今やライブの定番曲。
スキャット風のボーカルって、その日の本人のノリ方が出てしまったりしがちですが、この日は乗っていて良かった(笑)。
この年のライブからは女性2名によるバックコーラスも追加され、よりゴージャスになっています。
6. Gloria
こちらは4枚目「ヴァヴァーム!」から。
ブライアンは若い頃から成熟したヴォーカリストでしたが、この曲のファルセットを聴くと、より成熟した感を味わえます。
そんな、プレイヤー以外の力量を感じさせる曲。
いやぁ~、それにしても生粋のアメリカン・シンガーですね。
7. Drive Like Lightning(Crash Like Thunder)
こちらも同じく 「ヴァヴァーム!」 から。
ライブの超ド定番曲。
それにしても、4枚目のこの 「ヴァヴァーム!」 は前作ほど売れなかったのですが、ライブ定番曲てんこ盛りなので、本人はかなりお気に入りのハズです。
8. Caravan
第43回グラミー賞開催は、2001年2月21日。
この日のライブは、2001年2月22日。
4枚目の 「ヴァヴァーム!」 のこの曲の演奏が、グラミーの「最優秀ポップ・インストルメンタル・パフォーマンス」を受賞したことをブライアン本人が知ったのは、日本ででした。
演奏前に、その事を一言、観客に告げています。
この日の演奏は、そのグラミーを獲ったスタジオ演奏よりもはるかにスリリングで、グラミー3つに値するほどです。
オリジナルはデューク・エリントンの名曲。
ギャロッピングの名手、チェット・アトキンスや、ベンチャーズなど、様々なカヴァーがありますが、やはりBSOの演奏は圧巻です。
9. Americano
「ヴァヴァーム!」 から。
しかし、ブライアンはどこからこういう曲を仕入れてくるのだろう、というほど、マイナーな曲に光を当てるのが上手いですね。
マイナーなカヴァー曲、ド級メジャーなカヴァー曲、オリジナル曲が混在しても、1ミリも違和感の無いアレンジとパフォーマンス。それこそ、BSOの凄さです。
10. I Won’t Stand In Your Way
さてここから4曲、オーケストラの皆さんはしばし休憩、ギターとウッドベースと太鼓の、おなじみ3ピースセクションです。
オリジナルのライブ盤 「Jumpin’ East Of Java」 では、このセクションが収録されていなかったので、今回収録されたのはファンにとってウレシイ話ですが、前述の通り、その犠牲として完全演奏をむしろカットされている曲が存在しますので、複雑な気分です。
この曲はストレイキャッツの3枚目「Rant ‘N’ Rave With The Stray Cats」収録曲。
ブライアンのお気に入りで、ソリッド編成のライブではよく演奏されます。
11. Mystery Train
すべてはエルヴィスから始まっているんですよね。。。
恐らく、ブライアンの一番のアイドルはエディ・コクランだと思いますが、ロック史を語る上ではビートルズよりも重要視されることすらあるエルヴィス。
エルヴィスのカヴァーでは、ブライアンはこの曲がお気に入りで、ストレイキャッツ復帰後に久々にデイヴ・エドモンドと組んだ1992年のアルバム「Choo Choo Hot Fish」の最後の曲に、この曲を選んでいます。
12. Gene & Eddie
全く売れなかった復帰後ストレイキャッツの1989年のアルバム「Blast Off」収録曲。
ジーン・ヴィンセントとエディ・コクランへのオマージュ。
3ピース・ライブではまず演らない事は無い、というほど、ライブのド定番曲。
13. Rumble In Brighton
言わずと知れた、ストレイ・キャッツ時代の代表曲。
オーケストラとしてのアレンジはほぼ、この頃に極まっています。
ギターソロですが、ほぼほぼ20歳のデビュー時からの形を崩しておりません。
逆に、10代の頃にこのフレーズを作り、演奏していた事を考えると、恐ろしくさえなります。
日本ではアイドル扱いされたり、下手でも出来るカンタンなロックみたいに言われていたのが、今でも謎です。
文化祭で先輩のコピーバンドで弾くよう頼まれ、コピーしようとした時は、その難易度に驚愕したものです。
14. Sleepwalk
サント&ジョニーの名曲。
ブライアンも憧れのエディ・コクラン役で出演している映画「ラ・バンバ」で流れるのが印象的でした。
ラリー・カールトンやジェフ・ベックなど、多くの凄腕ギタリストがカヴァーしておりますが、やはりブライアンのヴァージョン、しかもこのアルバム収録のヴァージョンが飛び抜けて素晴らしいと言えるのではないでしょうか、ファン心理を差し引いても。
そして、見事第41回グラミー賞で、最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を獲得。
この、世にも美しい演奏を引き立てている要素として、骨董品とも言えるテープエコー「ローランドRE-301」を使用している事が挙げられます。
デジタル時代でも、彼は真空管アンプ・フェンダーベースマンと、このRE301には非常にこだわっています。
彼のギターテクが完璧にメンテナンスしており、スペアを数台用意しているとの事です。
よく不調になりがちですからね。。。私も、RE101とRE201を数台、持っておりましたので分かります。
ブライアン曰く、「テープの、スー、というノイズが絶対に必要なんだ」とのこと。
この曲は、ストレイキャッツの「Choo Choo Hot Fish」で、ギター、ベース、ドラムだけのシンプルなヴァージョンが聞けます。
実は私は、こちらのヴァージョンの方がお気に入りです、圧倒的に少数派意見ですが。
15. Stray Cat Strut
もう説明不要かと思いますが、ストレイキャッツ時代の代表曲。
これが若干20歳そこそこのデビューアルバムに収録されていることが、いまだに信じがたいです。
使われているコードやノートが、とても10代の少年によってアレンジされたものとは思えないからです。
これ、何度も言っておりますね、スミマセン。
ピンクパンサーのテーマを間奏に入れるようになったのは、この年からですかね。
ウッドベースソロはもうすっかり定番。
16. Jump Jive An’ Wail
1曲のライブで3曲のグラミー受賞曲。贅沢です。
3曲目はこの曲。
20世紀最後となった、第41回グラミー賞の、最優秀ポップ・パフォーマンス・グループ賞を受賞。
「ダーティ・ブギ」 からは、「Sleepwalk」と2曲、受賞しています。
当時の勢いが伺い知れます。
前作2作が商業的に芳しくなく、それでもこの3枚目を制作するバイタリティは凄いことです。
良いものは認められる、という信念でしょうか。
ただ単に、好きなことに全財産をつぎ込んだだけだとしたら、もっと凄い人ですね。
17. Pennsylvania 6-5000
スタンダードの、名曲中の名曲。
女性コーラス採用が活きていますね。
前述の通り、何故か間奏が編集でカットされています。
オリジナル盤「 Jumpin’ East Of Java」 を聴き込んでいる人、または当日ライブ会場に居た私のような人間からすると、神をも畏れぬ悪行です。
最初は時間の関係だと思いましたが、ほんの数小節のことなので、別の事情なんでしょうか。
ブライアン本人が承諾していたとしたら、さらに不可解ですね。
特に演奏がマズいとか無かったと思うのですが。。。
18. Gettin’ In The Mood
ビッグバンドと言えば、グレン・ミラー。
天国で、グレンミラーも喜んでいる事でしょう。
作曲は、ジョー・ガーランド。
19. Get Me To The Church On Time
ミュージカル「マイ・フェアレディ」から。
ビッグバンドは当然、スコアが必要なため、セットリストの突然の変更等はできませんし、また1曲を仕上げるのに相当な時間と労力が必要です。
ですので、必然的にアルバム収録曲からセットリストが選ばれることとなりますが、この曲のみは例外。アルバム未収録曲です。
情報が少ないので確かな事は分かりませんが、恐らくアルバム用にスコアが用意され、リハーサルや音録りもされていながら、ボツとなったものではないでしょうか。
ライブの為にスコアを起こしたとはちょっと考えにくいのです。
ちなみに題名は「時間通りに教会へ」というものですが、ストレイキャッツ時代、ブライアンはよくライブに遅刻していたなぁ。。
20. Rock This Town
この曲は、ここに極まれり、といった感じで、完全にアレンジも固まりましたね。
私はBSOのブートレッグを20枚ほど持っておりますが、この曲が入っていないライブは1枚たりともありません。
最後に何なんですが、私は3ピースのバージョンの方が好きです(笑)。
聴き終えて、、、、
どうなんでしょう。。。
私のようなファンにとって、最初から最後まで全く退屈する事はないのですが、一般人からしたら、退屈なものなのでしょうか。
ジョンレノンが語ったように、全てはエルヴィスから始まった、と言えます。
同じ起源なのに、ビートルズのように既成概念を壊していく革新派と、かたやリアルタイム世代ではないのに頑なにその形を変えずに王道を守るブライアン・セッツァーのようなアーティストが居る。
とても感慨深いです。
多分1999年だと思いますが、ブライアンが雑誌のインタビューでインタビュアーに「ポール・マッカートニーの『ラン・デヴィル・ラン』は聞いたかい?俺もあんなアルバムをいつか作りたいんだ」と語っておりました。それはすぐに実現していますね。
ポールの心臓の鼓動は8ビート、ブライアンの心臓はハネているだけで、根っこは同じなんです。
さあ、今回は2回連続でBSOの名作ライブを紹介致しました。
楽しんで頂けましたでしょうか。
それでは、また別の記事でお会いしましょう!

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